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史上最強の助っ人バースは、ヤクルト入団寸前だった-。阪神日本一への号砲となった、1985年(昭60)4月17日、甲子園の巨人戦でのバックスクリーン3連発から35年。先陣を切って3ランを放ったランディ・バースが阪神に入ったのは、隠された幸運によるものだった。当時ヤクルトの通訳で、後に優良助っ人の獲得に辣腕(らつわん)を振るった中島国章氏(67=写真)が、球史に埋もれた秘話を語った。【取材・構成=高野勲】

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1982年(昭57)オフ。ヤクルトの通訳だった中島氏は、相馬和夫球団代表、武上四郎監督とともに、米ハワイでのウインターミーティングに参加し、新外国人候補を物色していた。すると、パドレスのジャック・マキーオン代表に呼び止められた。ヤクルトの当時のキャンプ地アリゾナ州ユマで、同球団の施設を借りていた縁だった。

中島氏 パドレスからレンジャーズに移った左打者で「ウオーニングトラック・フライボールヒッター」がいると情報を得ました。それがバースでした。

ウオーニングトラックとは、外野フェンス手前で芝生の色が変わっていたり、白線が引いてある場所のこと。外野手にフェンスが近いことを知らせるため、こう呼ばれる。バースはそこまでは打球を飛ばせるが、米国の広い球場では柵越えを打てないという評価だった。現にメジャー6年間で9本塁打に終わっている。だが3A全7シーズンで2桁本塁打を放ち、80年には37本を記録していた。

強い関心を持ったヤクルト一行は、同じく参加していたバースの代理人アラン・ミヤサンド氏との接触に成功した。3人と同じホテルに泊まっていた同氏の部屋で何度もビデオを回し、打撃フォームを分析した。

中島氏 重心が低く、何より安定感がありました。打球も広角に飛ぶ。ヒッチ(打つ前に手首を下げる癖のこと)も小さい。これなら落ちる球にも対応できる。狭い日本の球場なら、現状の飛距離で十分と判断しました。「環境に慣れれば大化けする」と思い、獲得へ大きく傾きました。

ミヤサンド氏の元には、日本の複数球団からバースに関し問い合わせが来ているという。だがマキーオン氏から「ヤクルトとの交渉を優先してくれ」と頼まれ、他球団への返事を保留してくれていた。ヤクルトのバース獲得は、もう目の前だった。

ところが、事態は思わぬ方向へ展開する。前年に膝を故障していたバースは、守備に難があった。ポジションが一塁に限定されていた。当時ヤクルトの一塁には、大杉勝男、杉浦享と強打者が2人もいた。

中島氏 バースが外野を守れない、と分かった瞬間に雲行きが変わりました。武上監督が「大杉、杉浦の2人は打線から外せない」と判断したんです。

ヤクルトは方針を大きく変え、補強ポイントを二塁手に切り替える。この年オフに阪急(現オリックス)を退団し、強打と堅守を誇ったボビー・マルカーノを入団させた。この後、阪急との一騎打ちを制し阪神がバースを獲得する。阪急にはブーマー・ウェルズが入団した。そして85年10月16日、神宮でのヤクルト-阪神戦。優勝を決め大喜びするかつての恋人を、中島氏は一塁側ベンチで見届けた。

中島氏 バースが狭い神宮でプレーしていたら、いったい何本ホームランを打ったんだろうと今でも思います。彼とは球場で、何度も言葉を交わしましたよ。「日米文化の違いについて知りたい。周りとうまくやっていきたい」と謙虚に聞いてきました。「あなたはヤクルトに入団するはずだった」なんて話は、していませんけどね(笑い)。

勝負事に「もし」は禁句ではある。だがバースがヤクルトに入っていれば、85年巨人戦での掛布雅之、岡田彰布とのバックスクリーン3連発は起こり得なかった。いや、同年の阪神日本一もなく、球界の歴史は一変していたかもしれない。史上最強助っ人の誕生は、38年前の人知れぬ幸運に始まっていた。

◆ランディ・バース 1954年3月13日生まれ、米国オクラホマ州出身。66歳。ロートン高から米球界を経て83年阪神入り。来日当初は夫人のホームシックや父の死など試練が続く。85年に3冠王を獲得し、阪神の21年ぶりのリーグ優勝と初の日本一に貢献し、MVPを受賞した。翌86年も2年連続3冠王で同年の打率3割8分9厘は現在もNPBのシーズン最高。88年途中に長男の病気で帰国し、そのまま退団した。現役時代は184センチ、95キロ。右投げ左打ち。引退後はオクラホマ州の上院議員を務めた。




バースはヤクルト入団寸前だった 3連発から35年  https://www.nikkansports.com/baseball/news/202004170000286.html?Page=2  神宮ホームのヤクルトバースとかエグいことなりそう



バースはヤクルト入団寸前だった 3連発から35年 #SmartNews もしヤクルトに入団していたら、タイガースの日本一も無かったかも?  https://www.nikkansports.com/baseball/news/202004170000286.html 



この篭りモード真っ最中、こうゆう記事出てくるあたりニッカンは永遠だなぁ… 朝日は微妙すぎるのでニュースはYahoo軸にしてるけど、野球をはじめとするスポーツはニッカンWebが頼りになる。


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