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 【虎のソナタ】

 暑い。なのにグジャグジャな天気。土砂降りかと思えば、蒸し暑い。

 「藤浪晋太郎投手がいよいよ投げます。甲子園の記者席から眺めると夏の太陽にその笑顔がとてもサワやかでまぶしかったです」と、トラ番織原祥平の声も弾んでいた。

 やっと、真夏の甲子園に藤浪晋太郎が帰ってくる。

 言われるまでもない。同じ炎天下の甲子園で汗をしたたらせて走り回り、追いかけ回した元高校球児とトラ番はいわば“戦友”ではないか。当番の阿部祐亮デスク、キャップ大石豊佳、記者席から甲子園の緑に目を走らせる織原記者もみんな思いは同じだ。われわれの紙面の向こう側にはやけどしそうな「夏の晋太郎」がいる。

 と、まぁ勝手に燃え上がっていた。そこでフッと炎の監督、故・星野仙一を思い出した。彼は中日のルーキー時代に水原監督にしこたま鍛えられた。

 「星野、黙って俺の目をみろッ」とキザな青春映画みたいなセリフを何度も聞いた。

 その一つに「長嶋茂雄へのウソ」というのがあったそうだ。1958年の開幕戦、対国鉄で巨人の3番長嶋茂雄は注目のプロ初打席で三振。トドのつまりは金田正一に「4打席4三振する」のだが、その第2打席に向かうときに長嶋の気分を変えてやろうとして水原さんはこんな“ウソ”をささやいたというのだ。

 「おい長嶋。俺が若い時に全米軍と富山で対決したとき、あのべーブ・ルースらを初回に三者凡退に料理した。ルンルンだった。だから次の金田との打席でなんだこの野郎という目つきで挑め。みじんも怖がることはねぇぞ」と諭した。つまり気おくれなんかするな、というのだ。「それでベーブ・ルースの2打席目もお茶の子さいさいだった」と。これは真っ赤なウソである。

 実は第2打席、水原は実際にはルースと目があったとたんにマウンドで膝が震えた。その水原の初球をルースは右翼に火を吹くようなライナーのホームラン。だが水原さんは「勝負のメンタリティ」を教えようとしたつもりだったらしいのだ。

 あの金田正一投手との生涯2打席目の対決は空振り三振。かくしてメジャーにも例のない新人の4打数4三振に終わったのだが。

 要するに水原さんは若い星野仙一にその話をしたのは「選手を起用したときの指揮官は、たとえ結果がどう出ようとも絶対の信頼をまず監督が平然と覚悟できるかどうかだ」と教えたのだ。

 星野の炎と確信。選手への信頼はあの長嶋4三振のデビューの第2打席の三振、そこからスタートしていたのである。

 「投手心理はガラス細工のように壊れやすい」とは藤本定義さんがシミジミといっていた。「だから、こっちにも覚悟がいるんだ」と。阪神はいつの間にか借金生活から抜け出ようというところにきた。「これで、けがさえなければ、阪神はがっちりと波に乗れるんです」と運動部長大澤謙一郎は力を込めていう。デスク阿部は「藤浪投手はメロンパンが好物の一つでしてね。そこが浪速っ子らしくて、好感がもてるし、応援したくなるんです」とのことだが、はたして。

 -その樹を陰とする者はその枝を折らず(木陰で休息する者は、その木の枝を折ったりはしない)と中国の古代説話集にある。それほどモノしずかに、広島戦をみつめていきたい。まだ、揺り戻しはあるのだから。

 でもなぁ、たまにゃあうまいウナギでグビッとやりてぇよなぁ、皆の衆。




夏の季節! 甲子園で藤浪晋太郎の躍動する姿を見せてくれ! #甲子園球場 #阪神タイガース #藤浪晋太郎



23日の藤浪くんが待ち遠しい❗️


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