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日刊スポーツは名物編集委員の寺尾博和が、野球界をはじめ、各界著名人にインタビューするスペシャル企画「寺尾が迫る」を随時お届けしています。今回は、19日にウエスタン・リーグ中日戦(鳴尾浜)で開幕初戦を迎える阪神平田勝男2軍監督(59)の登場です。85年V戦士で、球団史上初3度目のファーム監督就任。ジャニーズ嵐のような、未来のスター育成に手腕を振るうつもりです。

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寺尾 球団史上、3度の2軍監督は例がありません

平田2軍監督(以下平田) ぼくとしては自然体ですね。1軍で結果を出せない大勢の選手を見てきた。でも結局は実力。この世界きれいごとでは生き残っていけません。

寺尾 若手が力をつけるためのヒントは?

平田 やっぱりコツをつかむことで、そのためには「数」でしょう。3回もトリプルスリーをとったヤクルト山田(哲人)でもキャンプでずっと数をこなしていたようだからね。

寺尾 いかに成長途上の選手を導くのか。

平田 ダメなものはダメとはっきり言うつもりです。「それではメシは食えないよ」と。やさしい言葉ばかりは並べない。

寺尾 前回同様の指導で?

平田 いや。前は頭ごなしで、それが反省点でした。今は瞬間的に「バカヤロー」とは言わない。「なぜ失敗したのか?」と聞いてあげる。ちょっと時差をつけるのを意識してます。

寺尾 毎年選手が入れ替わるわけですが。

平田 世間では「今の若い子は…」と愚痴を聞くがそうでもない。新人で高校出の小幡(竜平)、川原(陸)に、湯浅(京己)も立ち上がってあいさつができる。片山(雄哉)もハングリーです。

寺尾 新たな気付きもあるのですか。

平田 昨秋フェニックス・リーグの期間に馬場(皐輔)が朝の散歩でごみ拾いをしていた。日誌に「徳を積むことで野球の神様がみていると思うし、それをすることで自分も成長する」と書いてあった。

寺尾 グラウンド以外のふるまいも大事と…。

平田 野村(克也)さんも、野球だけでなく「人として」が大事とおっしゃったが、その通りだと思います。寮のスリッパが曲がっていれば並ばせるし、人として成長しないと。気配り、目配りはプレーにも生きる。それをこちらが馬場から教えられました。

寺尾 平田イズムとは?

平田 信念をもつことでしょう。「この選手をなんとかしたい」という気持ちは選手に伝わる。それは(元ヘッドコーチ)島野(育夫)さんに教えられた。だからコーチも、ウオーミングアップから私語厳禁、選手の一挙手一投足から目を離さないのが決まり。そうすると選手からの「ちょっと足がおかしい?」「体調が悪そう」というシグナルに気付くことがある。

寺尾 85年Vメンバーでユニホームを着ているのは唯一です。

平田 こうやってユニホームを着ているのは幸せです。あのとき戦ったメンバーの代表と思ってます。生え抜きだしね。無責任なことはできません。

寺尾 若手の台頭が望まれます。

平田 お客さんを呼べる生え抜きを育てたい。生え抜きのスーパースターは掛布(雅之)さん以来、ないもんね。広島は鈴木(誠也)、巨人岡本(和真)、ヤクルト山田がいる。鳴尾浜の中日戦で、根尾(昂)みたさの徹夜組が出た。うちの小幡には「根尾、小園(海斗)に負けるな」と言ってる。エースと4番の育成? それでおれもお役御免ですよ(笑い)。

寺尾 若手が一皮むけるのを期待したいですね。

平田 昨年1軍で投げた才木(浩人)、望月(惇志)も、そんなに甘くないことを感じていると思う。藤浪? 今回は覚悟してきているのが目をみたらわかる。復活させますよ。

寺尾 ファームの指導に将来がかかっています。

平田 最近は「なにくそ」という言葉が死語になっているが、そういう気持ちでやらせたい。われわれもケツをたたきます。ジャニーズ「嵐」のような若手が出てきてほしい。実力、人気を兼ね備え、華のある選手がでると、チームは盛り上がります。

寺尾 一足早く開幕します。

平田 1軍は優勝争いをしないといけない。2軍とはいえ勝たないと。負けるか! という強い選手を作りたい。もちろん育成は意識します。でも、やるからには勝つというプレッシャーを与えないと、選手は育ちません。

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<取材後記>

平田監督から繰り返して口をついたのは、「生え抜き」というセリフです。名ショートとしてならした人のフレーズは、生え抜きが伸び悩んでいるという裏返しでした。 ファーム監督が、掛布さんから矢野監督に譲られた理由を問われた際の球団からの説明は「世代交代」でした。それが、矢野監督は1年だけで、ベテランの平田監督が出戻りとしてその座に就くわけです。

キャスティングにケチをつけるつもりはないが、球団が「ファーム」をいかに位置付けているかの疑問は解決されていない。ただ1年前、2軍を率いた矢野監督のインタビューと共通するのは「生え抜き」という言葉です。

平田監督は9年前の10年、ウエスタン・リーグ優勝に導きながらも、その座を降りました。もはや忖度(そんたく)も、気負いもないでしょう。本人がいう信念を曲げず、若手育成のかじ取りに臨んでいただきたいものです。【寺尾博和】

◆平田勝男(ひらた・かつお)1959年(昭34)7月31日生まれ、長崎県出身。長崎・海星-明大を経て81年ドラフト2位で阪神入り。守備の名手として2年目の83年に遊撃の定位置をつかみ、85年には日本一に貢献。同年7月18日広島戦での1試合4犠打はプロ野球記録。ゴールデングラブ賞4度(84~87年)。通算成績は979試合、633安打、23本塁打、220打点、打率2割5分8厘。現役時代は177センチ、77キロ。右投げ右打ち。

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201903180000427.html

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