2

<虎番リポート>

記者が独自の視点で取材する企画「リポート」。今回は今年からタイガースアカデミーのコーチに就任した、元阪神の今成亮太氏(31)の姿を追いました。昨季限りで現役を引退。現役時代と変わらない明るさで、子どもたちに野球の楽しさを教えています。

   ◇   ◇   ◇

子どもたちの笑い声とともに、今成氏の明るい声が響いた。「コーチのほう、見て!」。現在は週に5日、タイガースアカデミーで子どもたちに野球の楽しさを教えている。

今成氏 成長を見ていて、すごく楽しい。さっきできなかったことができてるとか。先週打てなかったのに今週めちゃくちゃ打つぞとか。子どもの成長スピードはすごいなと思う。

西宮市や伊丹市など開催場所は毎日変わる。たくさんの荷物を乗せたワゴン車から降りると、まずはグラウンドの「設営」。心得が書かれた垂れ幕を取り付け、子ども用のティー打撃台、防球ネット、ベースと次々に手際よく並べていく。

今成氏 このアカデミーの一番のモットーは、やっぱり楽しく。そこから野球人口の増加だったり、タイガースのファンになってもらえたら。

幼児クラスは小さなボールを右手と左手に持ち替えたり、ボールと触れ合うことから始まる。遊びの中に野球が入っていることで、自然と野球に親しみ、好きになってもらうのが目的だ。

今成氏 (教えるのは)難しいよ。こういう風に言ったら分かるかな? って考える。バッティングでフラフラしちゃう子に、どしっとするんだよと言っても伝わらない。「コーチのほう見て! ピタッ! 見て見て!」って言ったり(笑い)。上から出しなさいって言うのを「剣道みたいにえいってやるんだよ」とか「トンカチとか上から重いもの、ドンって下ろす時、こうやるでしょ」とか。

昨年11月の合同トライアウト後、アカデミーコーチ就任の打診を受けた。その後もしばらく現役続行を模索していたが、引退を決意し、昨年1月にコーチになった。

今成氏 最初、あまり人に教えるということが好きじゃなかった。アカデミーのコーチをやることによって、人に伝える楽しさというのも感じたし、コーチっていいなと思えた。

2軍監督を務めていた矢野監督と過ごした1年間も、今成氏にとって大きな財産になった。戦力外通告を受けた当日、矢野監督から「1年しかやってなかったけど、ありがとう。これからもずっと応援してるからな」とメッセージが届いた。今年1月の球団年賀式で会った際に報告すると「そうか、よかったな。頑張れよ」と背中を押された。

今成氏 最後の1年間、矢野さんと一緒にできたっていうのは、すごく良かった。すごく勉強になったし、目標にできるような人だなと思った。ぶれないし、やっぱり伝え方とか、人に対しての話し方がすごく上手だと思う。

子どもたちの中にはタイガースアカデミーで野球の楽しさを初めて知り、少年野球チームに入る子もいる。それが一番の目的であり喜びでもある。

今成氏 野球を好きになってくれて、野球を続けるってことだから。一番うれしいことなんじゃないかなと思う。この中から1人でもプロ野球選手、出来れば阪神タイガースに入ってもらえたらうれしいです。

現役時代と同じ「49」の背番号をつけて、未来のスターを育てていく。

◆タイガースアカデミー・ベースボールスクール 18年4月に開校した阪神OBがコーチの野球教室。和田豊球団本部付テクニカルアドバイザーが特別顧問を務め、現在コーチは今成氏のほかに白仁田寛和氏、柴田講平氏、鶴直人氏、若竹竜士氏が在籍。幼児コースから学年ごとに4コースがあり、今年から野球上級者向けのアドバンスコースが新設された。15日から追加募集を受け付け中。

◆近年の少年野球人口 日本高野連の調査によると、18年の全国の硬式野球部員数は15万3184人。14年の17万312人から4年連続で減少している。日本中学校体育連盟の調査では全国の軟式野球部員数(男子)が、01年の32万1629人から17年には17万4343人まで減少した。

◆今成亮太(いまなり・りょうた)1987年(昭62)10月6日生まれ、埼玉・富士見市出身。浦和学院から05年高校生ドラフト4巡目で日本ハムに入団。12年4月に若竹竜士との交換トレードで阪神に移籍。昨季限りで現役を引退した。捕手、内野手、外野手としてプレー。プロ通算470試合に出場し、1039打数275安打、打率2割6分5厘、6本塁打。右投げ左打ち。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190416-04150738-nksports-base

続きを読む