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 4月上旬、阪神戦(京セラドーム)のテレビ中継を見ている時だった。あの寡黙でストイックなベテラン左腕の現役時代を取材した身として、「まさか、知っているの?」と驚いた。解説者の下柳剛さん(52)が思いがけないところに反応したのだ。

 「この音楽がまた何とも言えないですね…」

 この音楽とは、タイガース主催試合のリクエスト制度による検証中に流れるBGMのこと。これでピンときた方は多いかもしれないが、実は今季から人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の名シーン「ヤシマ作戦」のBGMで有名な「DECISIVE BATTLE」が使用されている。

 記者も“エヴァ好き”の一人で、この曲に変更されたと気づいた時には「いいチョイスだなあ」と思った。リクエストのシチュエーションと何ともマッチして、緊張感が高まる。大型ビジョンに同じ映像が何度も繰り返される間、判定が出るまでのドキドキ感が増す。そこで気になって、この選曲に携わった球団営業部の西村翔太さん(30)に電話取材の機会をいただくと、やはり明確な狙いがあった。

 「近年、リクエストのリプレー検証の際の選曲も各球団がいろんな特色を出している中で、タイガースも何か色を出していけたらと思っていました。テーマとしては、曲が流れた時にファンの方の間でコミュニケーションが生まれるもの。それと緊迫感を出せるものにしたかったんです。その中で、いろいろ探して『ヤシマ作戦』に決めました」

 判定に異議がある場合に監督が映像によるリプレー検証を求めることができるリクエスト制度は2018年から導入された。阪神がBGMを取り入れたのは昨年から。クインシー・ジョーンズの「ソウル・ボサノヴァ」(映画「オースティン・パワーズ」シリーズのテーマソングとして有名)が使われていた。しかし「他球場のことも意識しました。『名探偵コナン』(ロッテほか)や『踊る大捜査線』の曲(中日)だったり…。少し大喜利みたいだなと思い、阪神は関西という土地柄、面白いのが一番だと考えました」と西村さん。今年の1月頃から練り始め、最終的に絞った3曲から社内会議を経て、「DECISIVE―」の採用に至ったという。

 確かに、一度聞けば耳から離れないメロディーで、知っていれば必ず「あっ『ヤシマ作戦』のBGMや」と言いたくなる(記者もその一人)。知らなければ「あの曲、何?」って聞きたくなる。実際、SNSでも話題になっていて、球団内でも手応えを得ているそうだ。

 「ありがたいことに、ツイッターとかで『ヤシマ流れた』みたいな反響をいただいています。現状、いい意味で思惑通りだなと思っております」

 そう語る西村さんも「エヴァは好きです。アニメは見ましたし、漫画も読みました」と笑う。コロナ禍で球場に頻繁に足を運ぶことは難しいが、画面越しにも伝わる「サービスサービス♪」な演出は無数にある。もちろん、虎の「ヤシマ作戦」が成功すれば、好調のチームも勝利に近づくこと間違いなし!

(記者コラム=阪神担当・小松 真也)




甲子園でのリクエスト中はヤシマ作戦が流れるのかw



リクエスト中ヤシマ作戦のBGM流れてるのツボ


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