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 「阪神7-3広島」(2日、甲子園球場)

 阪神ドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)の恩師で、近大の田中秀昌監督(64)が黄金ルーキーの原点を明かした。4年間、田中監督が打撃面で意識付けさせてきたことは「トップの位置」をしっかり作ること。守備では「ハッスルプレー」を貫き、主力選手としてグラウンドで恥じない姿を見せることを求めてきた。

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 近大に入学して間もない頃の佐藤輝は「完全なボール球でも、なんでもかんでも振りにいっていた」と田中監督は振り返る。この点を改善させるために指揮官が4年間、指摘し続けてきた部分がある。

 「(入学当時から)フルスイングをできることが魅力でした。技術的に僕が言い続けてきたのは、“トップ”の位置を大切にしなさいということですね。『“トップ”の位置が決まらないと、間の形を取らないと打てないよ』とは彼にずっと話してましたね」

 ボールを打ちにいく一連の動作で、右足をついた瞬間に左肩の上部にあるバットの位置がトップ。弓の弦を引くのと同じ理論で、バットの引きが浅ければ飛距離は出ない。そして一定しなければ、ボールゾーンに逃げる変化球に対してバットが止まらなくなる。

 トップの位置を深く固定する意識を植え付けることで、徐々にフォームは固まった。「“さぁ、こい”とトップの位置ができて、ボール球も見送れるようになりました。そこから徐々に才能が開花してきましたね」。このワンポイントがアーチストの礎となっていった。

 そして田中監督が口酸っぱく言ってきたのが「プロはナンボでも泥んこになるで。軸の選手がハッスルプレーをしないと」-。近大時代は本職の三塁で打球に飛び込まないことが多かったという。

 主力選手が戦う姿勢を示すことで、チームの雰囲気は変わる。そしてゲームの流れも変わる。この日も、これまでも、一振りで虎のムードを変えてきたルーキー。その姿に恩師は目を細めている。




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