【トラとら虎】
阪神の高山俊外野手(27)が沖縄・宜野座キャンプで危機感を抱きながら定位置争いに挑んでいる。近本の中堅は不動として、両翼を競うライバルは糸井、サンズに、新助っ人ロハス、ルーキー佐藤輝と多い。「ハイレベルな戦いになるから必死です。いまから結果を出し続けないと置いていかれますから…」
これまで紅白戦を含む全9試合に出場。打率・444(27打数12安打)。そのうち5試合でマルチ安打を放つなど、見違えるような成績を残している。
好調の要因は打撃フォームの改造だろう。内角の速球に苦しむことから、思い切って構えをオープンスタンスに変えることにした。成果は安打の内訳でも分かる。左翼4本、中堅3本、右翼5本。両サイドへの対応力がついてきた証しである。
オフには胸を突かれる出来事があった。一つは4歳上の伊藤隼太外野手(現四国独立リーグ愛媛)の解雇。もう一つは大器と評判の佐藤輝明内野手の入団だ。
伊藤とは左打ちの外野手という他にも共通項は多かった。お互い東京六大学のスターで、ドラフト1位も同じ。ただ違うのは高山が2016年、打率・275をマークして新人王に輝いたことだが、トータルで見れば期待を裏切り続けたあたりも共通している。
そんな延長線上に今年の佐藤輝の獲得はある。矢野監督は内野志望のルーキーを外野で起用する意向で、現に評判通りの打撃を見せている。いまのところ高山の成績は佐藤輝と遜色ないが、ここに糸井、サンズ、ロハスも加わり、熾烈な外野戦争は本番に突入しても続くことになる。
球団OBのひとりは「高山が好調なのはそんな競争心の相乗効果。佐藤輝が高山のお尻に火をつけたといっても過言ではない。多分、伊藤の解雇にしても、明日はわが身と捉えたはずで、今年が定位置を取り戻す最後のチャンス」と注目している。(スポーツライター・西本忠成)