虎のエースが完全復活へ――。阪神・藤浪晋太郎投手(25)が11日のヤクルトとのオープン戦に先発し、4回2安打5奪三振1四球。矢野燿大監督(51)も絶賛の好投で先発ローテーション入りをグッと引き寄せた。高卒1年目から3年連続2桁勝利を挙げるも、昨年は未勝利に終わるなど最近3年は低迷。背水の8年目右腕には同僚選手からも「優勝するには晋太郎の力が欠かせない」とエールが送られている。
2012年のセンバツを制して一躍全国区となった藤浪が神宮球場で復活ののろしを上げた。初回こそ二死一、二塁のピンチを背負ったが、塩見を外角低め152キロ直球で見逃し三振に料理。ここ一番で繰り出したベストボールに「上半身と下半身の連動もよく、体をよく使えていた」と手応えをつかむと、その後も最速153キロの直球にカットボール、カーブ、フォークを自在に操り、4回2安打無失点。5三振のうち3つは右打者から奪ったもので、課題だった右打者への制球難も克服した。矢野監督は「良かったからこそ、さらに上のレベルを」と注文を忘れなかったが、先発ローテーション入りに大きく前進したのは確かだ。
今や藤浪の復活を望む声はナインの総意でもある。ともにプレーした経験のあるOBは「キャンプで一番驚いたのが、晋太郎を見る周りの目がいい意味で変わっていたこと」と言う。
これまでチーム内の「藤浪株」は乱高下を繰り返してきた。入団1年目から3年連続で2桁勝利を挙げ、投手陣の中心的存在になったころが最高値。前出OBによれば、当時はコーチに「この練習って意味あるんですか?」と意見することもあったそうで、ベテラン選手からは冷ややかな視線を送られたという。
成績が下降線をたどると、周囲の目は以前にも増して厳しくなった。それは藤浪もヒシヒシと感じていたのだろう。紆余曲折を経たことで精神面が成長したことは、メディアに発するコメントからも見て取れるという。
「4年目ぐらいまで自分の投球のことばかりだったのが、最近はチームに対してのコメントが多くなった。例えば、回の途中で降板したら『投げ切れずにマウンドを降り、ブルペンの方々に負担をかけ申し訳ない』とか。そういうことを自然と言えるようになった」(前出OB)
チームのために投げる投手にはチームメートも協力を惜しまない。「よく評論家の方が『優勝には藤浪が15勝』と言っていますが、選手としても同じ思い」。同僚からの温かいエールは復活を目指す藤浪にとって大きな活力となるはずだ。