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◆ 白球つれづれ2021~第4回・阪神の臨時コーチ招へい

 桑田真澄氏がチーフ投手コーチ補佐として巨人に復帰する。球界でも屈指の頭脳派コーチ誕生で投手陣がどんな化学反応を起こすのか興味深い。

 オフにはDeNAから井納翔一投手と梶谷隆幸選手をFAで補強し、一度はメジャー挑戦が確定的と思われた大黒柱の菅野智之投手が残留。これ以上の「補強」はないと言われている。今年もセの大本命は間違いない。

 ライバル球団で、最もオフに動いたのは阪神だ。ドラフトで「柳田二世」と評判を呼んだ佐藤輝明選手(近大)を競合の末に引き当て、さらに新外国人選手としてR・アルカンタラ投手とM・ロハス・ジュニア選手を獲得。共に昨年は韓国球界で大暴れ。アルカンタラは20勝2敗。ロハスは47本塁打に135打点と驚異的な数字をマークしている。難航が予想された守護神のR・スアレス投手との再契約も出来て、打倒巨人の陣容は整ったと言える。

 矢野燿大監督が就任して以来、3位、2位と着実にステップアップしている。だが、昨年も2位とは言え、巨人とは7ゲーム差。ライバルを引きずりおろしてチャンピオンの座に就くのは、容易ではない。

 そこで指揮官が打ち出したのがチームの体質改善である。投げて、打っての猛虎から緻密さを併せ持つ賢い虎へ。その切り札が沖縄キャンプに臨時コーチとして招請する川相昌弘氏だ。


◆ 巨人との差を埋めるには…

 元巨人、中日で活躍した守備の職人にして、バント名人。現在は野球評論家以外に巨人の親会社である読売新聞社の「スポーツアドバイザー」の肩書も持つ。

 遊撃手として6度のゴールデングラブ賞受賞、通算533犠打は世界記録の持ち主で、セ・リーグなら宮本慎也(元ヤクルト)、井端弘和氏(元中日など)らと並び称されるレジェンド。阪神からすれば宿敵に頭を下げて、教えを乞う格好だが、それだけ指揮官の本気度もうかがい知れる。

 ともかく、チーム失策85はお粗末の一語。3年連続12球団ワーストが続いている。ポジション別に見ても、一塁でJ・ボーアが「8失策」、J・マルテが「7失策」。マルテと言えば昨年10月の巨人戦で1試合4失策の不名誉なプロ野球記録を作ったのは記憶に新しい。

 二塁では若手の小幡竜平が「9失策」、三塁・大山祐輔が「6失策」、遊撃では木浪聖也が「8失策」と穴だらけ。投手陣も17失策など、失策がらみの失点は「67」を数えている。ちなみに阪神のチーム総得点は「494」で、総失点は「460」。同じく巨人は「532」に「421」。守備の改善を図れば巨人との差は縮まる計算が成り立つ。


◆ 今季の阪神を左右する!?

 すでに川相臨時コーチは、阪神の守備の映像を見て改善ポイントを整理している。

 「普通にきっちりプレーしておけば、エラーは何十個かは減る。そこをどうしていくかが今年の課題」と語っているが、「きっちりしたプレー」がポイントになる。歴代の名手が必ず口を揃えるのが、基本に忠実なプレーだ。キャッチボールの大切さが正確な送球の基となり、ボールの正面に入るフットワークがミスを少なくする。二遊間なら二塁ベース上でスライディングを避けながら送球する体勢も重要である。こうした基本中の基本に例年以上の時間を割くことになるだろう。

 川相コーチには当然、守備だけでなくバントの指導も依頼する。「送れる場面で何度失敗してチャンスを潰したか」と矢野監督も嘆く通り、小技の大切さが勝利に直結する。チームは昨年オフのコーチ編成で、新たに「バント担当」と「分析担当」の役職を加えている。頂上に立つには、守備やバントの緻密さは必要不可欠、キャンプでの変身が今季の阪神の成否を握っていると言っても過言ではない。

 かつて、宮本慎也氏は恩師・野村克也監督から「一流の脇役を目指せ」とハッパをかけられて名バイプレーヤーにのし上がった。高校時代まで投手だった川相氏も巨人入団後に野手転向して、自分の居場所を見つけた努力の人だ。果たして、阪神で“川相二世”は誕生するのか。

 150キロ超の快速球や、何十発の柵越えに目を奪われがちだが、地味な臨時コーチの動きにも要注目だ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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