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<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム>

完全復活を目指す阪神の藤浪晋太郎投手(27)には、今季ぜひとも区切りの1000奪三振を達成してほしい。現在946奪三振で、残りは54。持てる力を出し切れば、難なく到達できる数字である。

注目すべきはそのペースだ。昨年までの通算投球回は927イニング2/3だから、奪三振数が投球回数を上回っている。毎イニング必ず1人以上を三振に仕留めている計算だ。ここまでの現役通算ペースをそのまま当てはめれば、980イニング2/3で大台到達ということとなる。今季でいえば53イニング目だ。

昨年までに1000奪三振を成し遂げた投手153人のうち、所要投球回のスピード10傑を出すと(所属は達成時)

(1)藤川球児(阪神)771イニング2/3

(2)千賀滉大(ソフトバンク)855イニング1/3

(3)野茂英雄(近鉄)871イニング

(4)石井一久(ヤクルト)913イニング

(5)江夏豊(阪神)940イニング

(6)則本昂大(楽天)958イニング

(7)杉内俊哉(ソフトバンク)979イニング1/3

(8)伊良部秀輝(ロッテ)997イニング1/3

(9)山口俊(巨人)1033イニング

(10)田中将大(楽天)1042イニング

現状のペースでは、藤浪は8位に相当する。7位杉内との差はわずか1イニング1/3だから、上をいくことも十分に可能だ。

1年目の13年から3年連続2桁勝利を挙げ、15年には221奪三振でタイトルにも輝いた。大投手への道を、軽やかに歩んでいくと思われた。ところが翌16年に7勝に終わると、長らく低迷が続いている。

それでも長い球史の中でベスト10入りできるペースを現在も維持できているのだから、やはり卓越した能力を備えていると言わざるを得ない。直近2年の奪三振数を見ると、20年は76イニング1/3で85、21年は48イニング1/3で52。苦闘が続き勝ち星に恵まれなくても、実は投球回数を上回る三振を奪っていたのだ。

今季は開幕直後から、長いイニングを任される投球を見せつけることが何より求められる。過去、シーズン54K到達最速は登板9試合目で、15年と16年の2度。6月上旬の到達をメドにすれば、投球回も勝ち星もついてくるに違いない。3月5日のオープン戦楽天戦では4回5失点と乱れたが、それでも5三振を奪っている。偉業達成をきっかけに、今季こそ名投手の道へと再出発してほしい。「復活を懸けて」「背水のシーズン」なんて言葉は、もう見たくも聞きたくもない。【記録室 高野勲】

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