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 自主トレを見ていて、徐々に熱いものが込み上げてきた。和歌山県西牟婁郡上富田町の上富田スポーツセンター野球場。昼休憩後のノックで、阪神・陽川尚将内野手(30)が向かった先は左翼だった。「やっぱり外野が多くなると思うので、外野で感覚を取り戻しつつやりました」。今季は大卒9年目。「結果が出なければ終わり」と背水の覚悟で臨む1年を前に、甲子園の芝を縦横無尽に駆け回る自身を想像していた。

 17年ぶりのリーグ優勝、そして37年ぶりの日本一を目指す2022年シーズン。矢野監督が中堅・近本以外のレギュラー白紙を明言している中で、定位置争いの最激戦区は左翼ではないかと思っている。陽川と同じような志を持ち、可能性を信じて勝負を懸けてくるであろう選手は多い。

 以下、昨季の開幕オーダー(3月26日・ヤクルト戦)。

1番・中堅 近本

2番・二塁 糸原

3番・一塁 マルテ

4番・三塁 大山

5番・左翼 サンズ

6番・右翼 佐藤輝

7番・捕手 梅野

8番・遊撃 木浪

9番・投手 藤浪

 勝負強い打撃で前半戦の躍進の原動力となったサンズが、昨シーズン限りで阪神を退団した。現状、左翼はポッカリと空いている。推定年俸2億6000万円で2年契約最終年のロハス、チーム最年長の糸井、野手転向を目指す原口、再起を図る16年新人王の高山、井上、ドラフト4位・前川(智弁学園)も候補の一人に入るか…。

 シーズン143試合目でV逸が決まった昨年。矢野監督は「今日のこの最後の試合、こういう試合で勝ち切れる、もっともっといいチームに、もっともっと強いチームになっていけるよう、新たなスタートとして、この悔しさを持って、戦っていきます」と甲子園の虎ファンに約束した。

 レギュラー争い最激戦区の左翼をはじめ、中堅以外の各ポジションでし烈な生存競争が繰り広げられる今春。もっともっと強いチームになるために、チーム力の底上げは欠かせない。まずは今年の開幕オーダーがどうなるか。楽しみにしつつ、その過程を追いたい。

(デイリースポーツ・中野雄太)

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