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 期待に満ちあふれた“甲子園デビュー”だったが…。智弁学園から21年のドラフト4位で入団した前川は、“お試し昇格”だった昨年3月のオープン戦・対巨人でマルチ安打。高卒新人とは思えない落ち着いた雰囲気を漂わせ、22年中の1軍でのブレイクを予感させた。

 だが、3月末に上半身のコンディション不良。6月に2軍で復帰したが、外野守備中に背中からフェンスに直撃して負傷。公式戦での1軍昇格の機会は訪れなかった。

 故障の間、2軍本拠地の兵庫・鳴尾浜の室内練習場で、一人黙々とバットを振り込む姿を見てきた。「本当に何もできないですよ」と試合に出られない悔しさを口にしたが、両手のマメがつぶれ、血がにじんでいた。三重・津ボーイズ時代に「壊れかけのベンチプレスを倉庫から引きずり出し、一人で筋トレしていた」という話を思い出し、前川の野球への情熱を強く感じた。

 9月の2軍復帰戦でうっぷんを晴らすような一発。2軍で21試合に出場し、打率2割5分、3本塁打、7打点。高校通算37本塁打の実力を発揮し、4番も任された。

 秋季キャンプでは岡田監督の目にも留まった。「バットを振れる。(あれで)1年目やからな。もっと上の選手に見える」と、今春の1軍キャンプ帯同が内定した。「期待に応えられるように。レギュラーを狙って、失敗を怖がらず、挑戦していきたい」と目を輝かせる前川。今シーズンこそ、その大物ぶりを見せつけてくれるはずだ。(阪神担当・森脇 瑠香)

https://news.yahoo.co.jp/articles/56772a38e1ac116848312682f74ad93dbcd136f8 
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