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 選手間投票で新キャプテンに選ばれた阪神・坂本誠志郎捕手(28)が29日、チーム内で印象に残った今季の「5大トピックス」を明かした。自ら製作した虎メダルや来季の新パフォーマンス構想はもちろん、怪物・佐藤輝の意外な一面、そして前主将の大山から感じた覚悟―。悲願のリーグ優勝に向け“虎の仕掛け人”は様々な角度からチームを支えていく所存だ。(取材・構成=中村 晃大)

◆その1「虎メダル」

パドレスまねて7月上旬から本塁打者に 自身で製作

 「ある日の試合前、みんなでパドレスの試合を見ていたんですけど、『うちもやる?』みたいな流れになりました。あとはお笑いのノリでチェーンとかを買ってきて、全部で3000円ぐらい。来年はファンの方が何か作ってほしいとかなれば、おもしろいかもしれませんね。2月には新庄さんが(練習試合で)宜野座に来るので、こっちのベンチ全員ゴレンジャーのマスクをつけてる…とまではいきませんが、何とかメディアが阪神の話題でいっぱいになるように。プレーでも何でも、また見に来たいと思ってもらえるような取り組みをしていきたいです」

◆その2「緊張の声出し」

試合前の儀式 勝利すれば翌日も同じ選手が

 「矢野監督になってからですけど、ファームで監督されている時から『マジメに声出ししててもおもんないやん』とか、人を楽しませることをいつも意識されてました。今では声出しでどれだけ笑わせられるかも1つのステータスになってるんで、全員緊張してる(笑い)。でも、マルテが頑張って日本語で話してくれたり、ヤギ(青柳)が来てくれたり。声出しをベンチ外の投手がやるなんて、今までなかったですよ」

◆その3「規格外」

球団新人記録24発男・佐藤輝に意外な一面 英語力も怪物級?

 「試合前とか外国人と英語で会話してますよ。日常会話みたいな感じもできていますし、ロハスやサンズとバットの出し方とか技術的なことも普通に話せているんで。普段は超がつくマイペース。ネクストバッターズサークルに入ってないといけないのに、まだベンチ裏で素振りとかよくあります。新人であそこまで自分を通せるのは、かなり肝が据わってます(笑い)。試合中、名前を呼ばれるだけであれだけ拍手がもらえるのは輝か晋太郎ぐらい。人をひきつける魅力はいろんなところから感じます」

◆その4「宇宙人」

仲良しの糸井は今年も天然さく裂 凡人には想像できない“事件”も

 「嘉男さんはいろんな人のバットを使って自分の今の状態にはどのバットがいいかをよく探してるんですけど、シーズン終盤に『誠志郎、バット貸してくれ』と言われて。それで新品をあげたのに、試合になったら僕の使ってるバットで打席に行くんですよ。それをあげると言っても、ちゃんと返してくる(笑い)。ある試合では代打で僕のバットを持っていこうとベンチ裏から出てきたみたいなんですけど、『あれ、バットない』ってなって、それで打席を見たら僕が打席にいたらしい…。バットあるわけない(笑い)」

◆その5「前主将」

大山への思い 重責受け継ぎともにV目指す

 「悠輔は4番として期待が大きい分、悪い結果を取り上げられがちですが、勝負の鍵になるところで打ってますし、凡打でも絶対全力で走ってる。『俺がやらないといけない』という覚悟を持ってやっているなと今年は特に感じました。間違いなく悠輔のチームでしたよ。キャプテンマークはなくても、チームを引っ張る姿勢は常に持ってくれると思うので、少しでも力になれることがあるならなりたいし、みんなで力を合わせてやりたいと思います」

 ◆坂本 誠志郎(さかもと・せいしろう)1993年11月10日、兵庫・養父市生まれ。28歳。履正社高では2年夏と3年春に甲子園出場。明大では東京六大学野球で3度のリーグ優勝に貢献し、ベストナインを2度受賞した。4年時には大学日本代表で主将。15年ドラフト2位で阪神入団。通算188試合で打率2割1分1厘、6本塁打、33打点。176センチ、77キロ。右投右打。来季年俸2200万円。

アマ時代から主将歴任 ほろ苦デビューが「気配り」原点

 履正社高、明大、そして大学日本代表と主将を歴任してきた坂本の人柄を評価する関係者は多い。今季も佐藤輝が三振の新人最多記録を更新した際にあえて“表彰式”を行うなど、気配りのできる男だ。よく人間観察をしており、それぞれの性格を把握した上で、声を掛けるタイミングを見定めているように感じる。

 ほろ苦いデビュー戦が原点だ。16年7月19日の巨人戦(甲子園)。バッテリーを組んだ能見(現オリックス)が3回途中6失点でKOされ、自身も途中交代を命じられた。試合後、矢野作戦兼バッテリーコーチに呼ばれた。怒られるかと思いきや「こんな経験、なかなかできひんよ。これより下はあらへんやろ」。次に先発機会が与えられた8月10日の広島戦(マツダ)では再び能見をリードし、勝利を収めた。何事も前向きに捉える大切さは、今なお胸に刻んでいる。(阪神担当・中村 晃大)



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