阪神は3日から行われた巨人との首位攻防戦を2勝1分けと勝ち越し、再び首位に浮上した。この3連戦は中継ぎの岩貞が2勝を挙げるなど、リリーバーが流れを引き寄せた印象だ。
特に存在感を放ったのは小川一平投手。キャンプは1軍スタートながら、前半戦の1軍登板はなし。8月24日のDeNA戦で今季初登板を果たしたばかりだ。しかし、内容のあるアウトを積み重ね、首脳陣の信頼を得た。
すると、9月4日の巨人戦では1点ビハインドの八回に登板。きっちりと無失点に抑え、九回のサヨナラにつなげた。翌5日は2点差に迫り、完全に流れを引き寄せたい七回のマウンドへ。重圧もかかる中、圧巻の三者凡退。その裏の同点劇は小川の好投がもたらしたものと言っても過言ではない。
なぜ、小川が勝負の後半戦で“覚醒”したのか。私は、2軍新記録の16連勝と、脅威の快進撃を続けるファームでの取り組みにあると感じた。
小川は投球の幅を広げるため、2軍では先発ローテの一角を担った。当初は、二回り目につかまり、五回を投げきるのが精いっぱい。それが、登板を重ねるごとに二回り目をクリア。さらには、三回り目も対応できるようになってきた。
「この経験は間違いなく生きる」と右腕。昨季は直球に頼りきりで、変化球でカウントを取れなかった。それが、先発を経験したことでカーブやスライダーに自信を持って、投げられるようになった。中継ぎで1回を抑えることが“楽”に感じているはずだ。
2軍での成長は小川だけではない。3日の巨人戦で3年ぶりの先発起用となった島田海吏外野手。ここぞの代走として重宝される植田海内野手。貴重な左の中継ぎ・及川雅貴投手は春のキャンプを2軍の安芸で過ごした。
さらに、小野寺やロハス、小幡、木浪なども前半戦は2軍暮らしが続いた。それでも、今のファームは1軍同様の緊張感がある。それは、連勝記録も一つの要因だが、日頃から各選手が1軍で何を求められるのかを見極め、2軍の試合でもそれを求められるからだ。
2軍の試合とはいえ、「はい、どうぞ」と簡単には打たせない。今のメンバーで言えば、熊谷や山本には試合の序盤から犠打を命じる。後半戦の1軍マウンドで悔しい思いをした浜地にはクローザーを任せ、緊迫感を味わわせている。
平田2軍監督は連勝記録が続く中、取材対応で常に同じ言葉を発信した。「9月、10月とね、1軍も勝負の月になってくる。必ず、チャンスが出てくるんで。また、1軍に呼ばれようという気持ちの表れだよ」
江越、陽川、板山、高山など野手は中堅クラスが多い。投手陣は西純、村上、浜地、石井大など若手が出番に備えている。悲願の優勝に向けた、勝負の後半戦。小川のように、2軍からの救世主が1軍の窮地を必ず救うはずだ。(デイリースポーツ・今西大翔)
【中田良弘氏の眼】同点劇呼び込んだ阪神・小川の投球 https://www.daily.co.jp/tigers/2021/09/06/0014655551.shtml …