【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】阪神
〝阪神主導〟のブレークスルードラフトが今オフの12月に開催! ここで一気に球界の主導権を奪い取るならば、グラウンドでも打倒巨人を果たさなければなりません。いよいよ3・25シーズン開幕までカウントダウンを迎えた中で阪神・谷本修球団副社長(57)が選手関係委員長として主導してきた現役ドラフトが今オフの12月に開催されることが決定的となりました。4月1日付人事で取締役オーナー代行に就任し、電鉄本社のスポーツ・エンタテインメント事業本部長に就任する同氏にとっては球界への〝置き土産〟です。巨人が強硬に反対した中での開催実現で、阪神の球界内での存在感は高まります。後はグラウンドで…打倒巨人! ならば球界の中心は、そら阪神やろ⁉
■評論家「今季はAクラス」と太鼓判
いよいよシーズン開幕3・25まで後10日を数えますね。矢野燿大監督(53)が春季キャンプ前日の全体ミーティングで「俺の中で今シーズン限りで退任しようと思っている」と衝撃的な退任表明を行ってから、キャンプ、オープン戦と消化していき、もうシーズンです。時の過ぎゆくのは早いものですなぁ~。
オープン戦10試合を消化した時点で、阪神の成績は5勝3敗2分け。チーム力を数字で見ると、チーム防御率2・22、25失点は上々の成績です。「開幕投手の大本命」と書いた青柳が安定した投球を見せ続けて初の開幕投手に。このコラムで〝けしかけた〟藤浪・開幕は露と消えましたが、それでも藤浪は12日の中日戦(甲子園球場)に先発し、5回をノーヒットピッチング。開幕第2戦の先発は決定的でしょう。さらに秋山や西勇、ガンケル、伊藤将らが先発ローテーションで回るのでしょう。リリーフも馬場、小川、岩崎、湯浅、石井、及川らが控え、抑えを予定しているカイル・ケラーもそろそろ実戦に登場します。
あくまでも他球団との比較でも、これほど量と質がそろっているチームは見受けられません。〝身びいき〟ではなく、投手力は今季もリーグのトップクラスですね。
逆にチーム打率2割4分5厘、3本塁打、39得点の攻撃陣を見ると、昨季に引き続き、機動力は使えていますが、長打力には???が…。新4番確定の佐藤輝にオープン戦でまだ1本も本塁打が出ていないこともありますが、これから先、マルテや大山、ロハス・ジュニアを含めた中軸に本塁打が出始めるのか? 昨季は143試合でチーム本塁打は121本塁打。リーグ5位の数字でしたが、このあたりの改善が求められるのかもしれません。ただ、チーム全体のバランスなどを見ると、ネット裏の評論家諸氏の評価も高く、「確実にAクラスには入る」という声が圧倒的です。
■新ドラフトはトラに追い風?
こうしたグラウンド内の状況に追い風を吹かせる情報が入ってきました。2年越しで12球団経営者側と選手会が水面下で折衝を続けてきた「ブレークスルードラフト(現役ドラフト)」が今オフの12月に開催されることが決定的になったのです。まだまだ輪郭がハッキリと見えているわけではありませんが、時期は12球団が戦力外通告を行い、来季の保留者名簿に入る選手が確定した後の12月に開催される方向です。各球団がそれぞれ最大4~5人の選手を「現役ドラフト会議」に提出し、それを他球団が指名して獲得するシステムですね。
大リーグでは「ルール5ドラフト」として定着していますが、プロ入り後、ある一定の年数を経ているにもかかわらず、2軍でくすぶり、1軍の戦力として起用されていない選手を対象に「セカンドチャンス」を与えるドラフトです。具体的な名前を書くと語弊があるので書きませんが、阪神でもドラフト1位入団なのに、ここ数年は1軍の戦力になっていない野手もいますよね。こうした選手たちを〝飼い殺し〟にせず、他球団で〝生かす〟ために、ブレークスルードラフトを開催するのです。
では、なぜ日本プロ野球界初の「現役ドラフト」開催が阪神への追い風になるのか…。それは同ドラフト実現の旗振り役として、尽力してきたのが阪神・谷本修球団副社長だからです。そもそも選手会の強い要望で始まった現役ドラフト導入案に対して、理解を示し、折衝を続けていたのが谷本副社長です。
逆に導入反対を声高に叫んでいたのは巨人でした。『現役ドラフトを行っても、それは戦力外通告者の交換にしかならない。それにウチは選手を飼い殺しにしていない』という理由でした。現役ドラフト案が浮上した後、確かに巨人は楽天やヤクルトなどと積極的にトレードを行い、阪神にも金銭トレードで山本泰寛内野手を譲渡しています。
ただ、他球団の関係者は巨人の姿勢について首をひねっていました。
『巨人は選手を飼い殺しにしていない、と主張していたが、毎年のようにフリーエージェント(FA)補強や大物外国人選手を獲得して、若手の出場機会を奪っているのではないだろうか。実際、多くの中堅から若手選手が2軍や育成契約でくすぶっているのでは…』
■巨人との交渉に〝勝利〟
12球団の思惑が交錯する中で、谷本球団副社長は粘り強く交渉を継続し、やっとブレークスルードラフトの実現を見るわけです。つまり、ザックリとした見方をするならば、谷本球団副社長は巨人との交渉で勝利した…と言えば言い過ぎでしょうか。長い日本プロ野球界の歴史の中で、球界の盟主といわれる巨人の意向を覆した、数少ない出来事のように思います。プロ野球界の中で「阪神タイガース」の地位を中心に押し上げた…と有頂天になるのは少々、ハシャギすぎのような気もしますが、たまにはそれぐらい褒めてもいいでしょう。
谷本球団副社長は4月1日付人事でオーナー代行に就任。本社のスポーツ・エンタテインメント事業本部長に就任予定で、球団からは去ります。まさに球界への〝置き土産〟となるのがブレークスルードラフトなのですが、こうしたフロントの〝勝利〟を現場はつないでいかなければなりませんね。
昨季、阪神は対巨人戦で13勝9敗3分けと勝ち越しました。なんと2007年に14勝9敗1分けで勝ち越して以来、実に14年ぶりのことです。阪神が巨人に勝ち越せば、すなわち阪神の優勝のチャンスは膨らみます。昨季はヤクルトに勝率5厘差で優勝をさらわれましたが、77勝は12球団で一番勝っているのです。巨人を倒せば、チームに勢いが生まれ、相乗効果で他球団にも勝つ好循環が生まれます。特に今季は5月24日から始まる交流戦までの前半戦で、週末の巨人3連戦が4カードも組まれていますね。この12試合をどう戦うか…で今季の両軍の戦況は大きく左右されるはずですね。巨人を圧倒し、グラウンドでも阪神が優位に立つならば、球界の盟主の座をいよいよ脅かすことになるでしょうね。
ブレークスルードラフト開催が決定的になった球界の背景…。阪神はフロントマンの大仕事をグラウンドでも生かさなければなりません。ならば、矢野監督は有終の美を飾る…となるわけです。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。
#プロ野球選手会 が現役ドラフトの今オフ導入に手応え NPBと事務折衝 : スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20220315-OHT1T51056.html …
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