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 阪神の西勇が、心身ともに充実した仕上がりで、26日の中日戦に先発する。オープン戦開幕にして今春初実戦。さらには青柳、秋山が同日に登板する開幕投手を占う一戦でも、プロ14年目右腕に気負いはない。

 練習後は「普通に」という抱負を何度も何度も繰り返した。「普通に2イニングを投げ切って普通に(関西へ)帰りたい」「マウンドの感じや自分のタイミングを普通に経験して、普通に終わりたい」といった具合に、だ。

 「普通」を裏返せば、メニューを順調に消化できているということ。昨春キャンプはぜんそくが悪化して途中離脱をした。対照的に今春は「(通算で)1000球を投げられているのはでかい。投げ込みを普通にできた」と充実している。故障なく過ごせれば、シーズンを戦い抜く青写真が描けているのだ。

 初登板を前に、精神面も整った。24日からの2日間、他の選手とともにメンタル講習会を受講した。矢野監督が招いた講師、尾崎里美さん(59)のレッスンは、12年前にも受けたことがあった。

 当時プロ2年目。顔面神経まひを患って、野球人生の岐路に立たされた時だ。そこで、尾崎さんの言葉に耳を傾けたという。以後、タブー視される「試合中の笑顔」を取り入れるなど考え方を変え、「僕はためになったからここまで来られた」と通算101勝を積み上げた。今回、再び話を聞き「あっという間の2時間でした」と心に弾みをつけた。

 実戦マウンドは、右肘不安のために2回途中で緊急降板をした昨年10月13日の巨人戦以来、136日ぶりになる。昨季は春の調整の狂いが夏場に“膿(うみ)”となって噴き出し、6連敗の苦い経験もした。充実したキャンプを過ごす今年は、ひと味違うはずだ。 (倉世古 洋平)

 ▽西勇の21年最終登板 10月13日の巨人戦で先発。1―1の2回1死二、三塁から松原の二ゴロの間に2点目を失った直後、三塁側ベンチに右手を振るわせるしぐさを見せ、自らベンチへ下がり、交代を告げられた。緊急登板した伊藤将の好投で引き分けても、勝った首位ヤクルトに2.5ゲーム差へ離された。以降は登板がなく、19年の加入後では最少の6勝(9敗)で終えた。

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