阪神のドラフト1位・佐藤輝明内野手(21)=近大=の猛打に「迫る」―。ここまで沖縄・宜野座キャンプの実戦9試合で打率4割2分4厘、2本塁打、8打点。7日の紅白戦からは7試合連続安打をマークし、昨季新人王に輝いた広島・森下も打ち砕いた。4球団が競合した怪物ルーキーはなぜ打てるのか。関係者の見解で一致したのは「バットの面」という言葉だった。(取材・構成=中村 晃大、島尾 浩一郎)
慌てている姿を見たことがない。阪神の沖縄・宜野座キャンプで佐藤輝が話題を独占している。中でも目を見張るのが追い込まれてからの冷静さだ。2ストライク後の打率は23打数9安打の3割9分1厘。まだ開幕前の9試合とはいえ、昨季12球団最高の数字を残したオリックス・吉田正の3割2厘を大きく上回っており、投手有利のカウントでも自分の形が崩れない。
1年目にして、なぜそんなことが可能なのか―。スポーツ報知評論家の掛布雅之氏=阪神レジェンド・テラー=は「ミートポイントが捕手寄りなので、球の見極めが良く変化球にも対応できる」と分析。加えて「ヘッドが体に巻き付くように内側から出るので、常にバットの面でボールを捉えている。だから多少タイミングが早くなったり、遅くなってもスイング軌道に球が収まっている」と解説した。
巨人・横川スコアラーも「筒香(レイズ)とか飛距離の出る打者は大体リストを利かせて打つ選手が多いけど、(佐藤輝は)球に対して面が長く向いているからミート率も上がる。引っかけた内野ゴロを見たことがない。間違いなく素晴らしい打者だと思います」と同様の印象を抱き、日に日に警戒を強めている。
置きティーで確認 佐藤輝はフリー打撃の前にトスを上げてもらう通常のティー打撃でなく、スタンドに乗せた球を打つ“置きティー”も行う。静止した球でコースごとのミートポイントなどを確認。周囲に流されず、自己流の調整法を貫いている。得点圏打率5割4分5厘と、チャンスに強いことも一連の準備の成果だろう。フルスイングの中には、すでにプロの技術が詰まっている。