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2022年の幕が開けた。昨年のプロ野球セ・リーグで終盤までヤクルトと優勝争いを繰り広げた阪神。遊撃手のレギュラーの座をつかみ、盗塁王のタイトルを獲得した中野拓夢内野手(25)が、今季に向けた決意を新たにした。

古くは「牛若丸」と呼ばれた吉田義男。近年ではプロ野球歴代2位の1939試合連続出場を果たした鳥谷敬。阪神では代々、名手といわれた男たちが甲子園の遊撃のポジションを守ってきた。その後継者に中野が新たに名乗りを上げた。

昨季は新人ながら開幕1軍の座をつかむと、主に「2番・遊撃」で先発起用され、俊足を武器に30盗塁を記録して球団新人では2001年の赤星憲広以来となる盗塁王のタイトルを獲得。上々のルーキーイヤーとなった。「昨季につけた自信を無駄にせず、自信を確信に変えられるようにしたい」。今季は2年連続の盗塁王を目標に掲げ、自らを奮い立たせる。

「30盗塁は自分の中では少ないと思っている。今年は50盗塁が目標」。長い球団史の中でも、50盗塁をクリアしたのは赤星、吉田の2人のみ。偉大な先輩たちの足跡を追いかけていくつもりだ。

遊撃手にはこだわりもある。「小さな頃からあこがれていた鳥谷さんが守っていた一番華のあるポジション。誰にも譲りたくないという気持ちがある」。プロで1年戦っただけの25歳にとってライバルは多い。2月の春季キャンプで再び待ち受けるレギュラー争いに向け、気を引き締めた。

1年目から主力として戦えた経験は精神面で大きな糧となった。とくに強く意識したのが、新型コロナウイルス禍で制限があった中、声援を送ってくれたファンへの感謝だ。「スタンドが満員になれば、もっとすごい声援を感じられる。優勝するのがファンへの一番の恩返しになるし、走る姿をもっと見せたい」。コロナが収束すれば超満員の甲子園でプレーし、リーグ優勝に貢献する自身の姿を思い描く。

「スタンドのファンから『しっかり守れよ』『打てや』という声が聞こえてくるのもアマチュア時代にはなかったこと。いい刺激にして結果で応えたい」。厳しいやじが飛ぶのも、人気球団に所属する選手の宿命。度胸もつけて一回りたくましくなった25歳が、2年目の大きな飛躍を目指す。(上阪正人)



■中野拓夢(なかの・たくむ)1996年6月28日生まれ、山形県出身。日大山形高から東北福祉大に進学し、三菱自動車岡崎を経て2021年にドラフト6位で阪神に入団。1年目の昨季は遊撃の定位置を奪取し、135試合に出場。打率2割7分3厘、1本塁打、36打点。30盗塁を記録して盗塁王に輝いた。背番号51。171センチ、69キロ。右投げ左打ち。



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